病気の不安を乗り越えるための3つのこと~山本悦秀先生インタビュー(前編)~
ストーマ保有者で公益社団法人日本オストミー協会の副会長を務める山本悦秀先生に、お話をお伺いしました。本インタビュー記事は前編と後編に分けてお届けしており、前編ではストーマ造設時のことや病気との向き合い方についてお伝えしていきます。
山本悦秀先生プロフィール:
62歳のときにストーマを造設し、現在77歳(インタビュー時)。ご経歴は札幌医科大学講師、助教授を経て1988年より金沢大学にて医学部歯科口腔外科教授。2011年に定年退職後は名誉教授に。現在は日本オストミー協会副会長を務め、講演や著書で自身のストーマ生活について積極的に発信。著書に『走る定年教授の充実オストメイト・ライフ』他。
62歳のとき、大腸がんでストーマを造設
コンバテック:本日はよろしくお願いいたします。さっそくですが、まずストーマを造設することになった経緯について伺ってもよいでしょうか?
山本先生:現在77歳で、大腸がんでこれまで3回の手術を受けました。60歳で下行結腸がんが分かり最初の手術をしました。その際は、ストーマを造設するかもしれないと聞いていましたが、結局はしませんでした。その後、62歳のときに上部直腸にがんが再発し、その際にストーマ造設(一時的)をしました。その後、肝臓に肝転移し、3回目の手術で切除し、その時に一時的と説明を受けていたストーマを永久受容いたしました。
コンバテック:手術を3回ご経験されたのですね。2回目の手術では、ストーマを造設されていますが、その際はどのようにストーマを受けとめましたか?
山本先生: 1回目の手術のときに事前にストーマをつけるかもしれないと聞いていました。その時は結局ストーマ造設しなかったですが、そのころから可能性は意識していました。そして、2回目の手術が終わったときにストーマがついている状態で起きて、「ああ、ついているな」という感じで知りました。何よりもがんの状態が心配だったので、正直、ストーマにまでは気が回りませんでした。
コンバテック:手術のあと、ストーマについてどのような説明を受けましたか?
山本先生:私自身ドクターなので、「わかるよね?」という感じで、詳しい説明は受けませんでした。はじめは一時的ストーマ(一時的)と聞いていたので、それほど気にしていなかったのもあります。いずれ戻してくれると思っていました。
病気の不安を乗り越えるための3つのこと
コンバテック:一時ストーマから永久ストーマに移行されたのですね。3回の手術を経て、病気や体の変化にどのように向き合いましたか?
山本先生:肝転移の手術の後は、体調の浮き沈みがあって、たいへん不安を感じました。でも、前向きに生きようと思い、主に3つのことに取り組みました。1つ目は、他の患者さんの情報をたくさん見聞きすること。実際に同じような経験をした方のストーリーを知ることは自分の自信や勇気にもつながりました。2つ目は、趣味の市民マラソンを楽しむこと。今も続けています。3つ目は、笑うこと、Laughingですね。笑うことで、NK細胞が増えて免疫が上がるので、日ごろから意識しています。
コンバテック:さまざまなことに前向きに取り組まれたのですね。特に、「笑うこと」というのは、簡単に聞こえて、難しいことかもしれません。実際にはどのようなことをされるのですか?
山本先生:私の場合、落語などのテレビを見たりしました。家内との会話でも楽しい話題が多いですね。
コンバテック:なるほど。さきほど趣味のマラソンという話もでました。趣味を再開することを目標に、手術後の回復期を過ごす方も多いようですが、マラソンは手術前から行っていたのでしょうか?
山本先生:そうですね。もともとマラソンが趣味で、全国各地の市民マラソンに参加していました。今も週1回皇居周辺10kmを走っています。今はお酒も少し飲むのですが、ランニングの前後の日はお酒を飲まないようにして、メリハリをつけて楽しんでいます。
コンバテック:動画でも皇居ランニングの姿を撮影させていただきましたが、メリハリをつけてご自身の好きなことを楽しんでいらっしゃることがよく伝わりました。
山本先生:そうですね。孫が近くに住んでいるので、その成長も楽しみです。
山本先生のHealthy Bond(健全な絆)- 不便であっても、不幸ではない
コンバテック:コンバテックでは、ご自身やストーマとのつながり、そして周囲の人や社会とのつながりが健全であるということが重要だと考え、“Healthy Bond(健全な絆)”という言葉を使っています。山本先生のストーマとの関係について伺ってもよいでしょうか?
山本先生:私のストーマのとの関係を一言で表すと「ノーストーマ・ノーライフ」です。我々は不便であっても、不幸ではない、という言葉があります。毎日ストーマと一緒にいないといけない。それがないと生きてはいけないので、不便とは思いますが、決して不幸ではなく、毎日充実しています。ストーマがあっての人生なので、感謝しています。
前編ではオストミー協会の副会長である山本先生にストーマ造設時のことや病気との向き合い方についてお話いただきました。後編では山本先生に周囲や社会とのつながり(Healthy Bond)についてのお考えやストーマケアについてお話をお聞きします。
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